フジスーパーにみる差別化戦略の重要性について

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Q:タイのビジネスで生き残るため、他社と差別化していくためのヒントはありますか。
バンコク在住の日本人ならみんなが知っているフジスーパーが参考になる情報を提供しています※1。
※1 สกัดเคล็ดลับ “UFM FUJI” ซูเปอร์มาร์เก็ตญี่ปุ่นที่อยู่ในไทยมา 39 ปี มีแค่ 5 สาขา แต่ไม่เคยขาดทุน! (2023) https://positioningmag.com/1443659
図表が示す通り、フジスーパーを運営するUFM Fuji Super Co., Ltd.社はタイで同様にスーパーマーケット事業を営む同業他社に比べて店舗数は少ないものの、店舗当たり売上高、店舗当たり税引前純利益では優れた数値を計上している会社です。
同社が行っている差別化における3つの重要なポイントについて、同社提供の情報をもとにまとめてみます。
① ターゲットが明確であること: 「日本人駐妻」をターゲットにした店舗展開
同社は日本人駐妻の日々の買い物ニーズを満たすことを戦略にしています。すなわち、運転しなくても行けるよう、日系企業の駐在員が多く住むエリア(スクムビット通りの奇数側)の徒歩圏内に位置する、日本での買い物と同じレベルの品質水準を保つようにする(取扱製品の90%は日本からの輸入品。生鮮食品用冷凍庫も日本から輸入する)といった点です。そして、その戦略に資するのであれば、今後のさらなる店舗展開も検討し得る、としています。ターゲット顧客の性質が明確なことで、何をすればよいのかが明瞭になっているといえます。
② やらないことも明確であること:シラチャやチョンブリーへの出店には慎重
日本人がいるエリア、という意味ではシラチャやチョンブリーも候補地になるのでは?と思われますが、これらのエリアに住む日本人の多くは単身者であり、自炊より外食を好むはずだという仮定に基づき、出店には慎重な様です。確かに前述の通り同社のターゲットは『日本人』ではなく「日本人駐妻」ですから、これに該当する顧客が同エリアに少ないのであれば、日本人がいるとしても出店しない、というのは合理的でしょう。このように、やらないことが明確になっているというのも重要なポイントです。
③ 環境に応じて戦略をアジャストすること: タイ人や他の外国人を狙った店舗展開も開始
コロナ禍を受けて日本人駐在員は減少し、結果として同社のターゲットである「日本人駐妻」も減少しています。この状況を受け、既存のターゲット顧客以外の顧客層であるタイ人や他の外国人の獲得をめざし、同社は2023年2月に5号店をスクムビット通りの偶数側にオープンしました。この通り、戦略に即してやること・やらないことを明確にしつつ、必要に応じて改変するのも重要と言えるでしょう。
このように、やること・やらないことを明確にしつつ、それを適宜に調整していっているという意味で、自社事業を他社と差別化する方法を学ぶ上で有用といえるでしょう。。

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倉地 準之輔
日本で大手監査法人、外資系企業勤務を経て、2013年来タイ。外資系会計事務所のジャパンデスクにて日系企業向けコンサルティング業務に従事した後、15年10月にBizWings (Thailand) Co., Ltd.を設立。経営コンサルティング業務を提供し、現在に至る。公益財団法人東京都中小企業振興公社タイ事務所経営相談員。ジェトロ中小企業海外展開現地支援プラットフォーム・コーディネーター。公認会計士(日本)。東京大学経済学部経営学科、米ケロッグ経営大学院卒業(MBA)。
「タイ人スタッフとの情報伝達についてのコツが聞きたいい」と思ったらBizWingsにどうぞ。
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