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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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中小企業社長兼経営コンサルによる、現場発-経営論

タイ居住者の個人所得税の課税範囲拡大について

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      Q:タイで個人所得税に課税される範囲が広がると 聞いたのですが、詳細を教えて下さい。

      タイの個人所得税に関する歳入法典の解釈指針が新たに発表されたことにより、タイの居住者が外国で稼得した所得がタイに持ち込まれた場合、それが過去に稼得された所得であったとしても、課税対象となることが明示されたというのが今回の内容です。

      タイ歳入法典上、タイに180日以上滞在するタイ居住者が、外国で稼得した所得(タイ国外源泉所得)をタイに持ち込んだ場合、課税の対象となる旨が規定されています※1。一方、具体的に「いつ稼得した所得をタイに持ち込んだ場合が課税の対象なのか」に関する定めは同法上されていません。この点、これまでは、所得を稼いだ年に持ち込んだ場合のみ課税するというのがタイ歳入局の解釈指針になっていました。

      ※1 タイ歳入法典 第41条:こちら

      一方、タイ歳入局から示された新たな解釈指針※2や説明資料※3により、過去のタイの居住者であったときに稼得された所得についても、タイに持ち込まれた場合に課税されることが明示されました。この解釈指針は2024年1月1日以降タイに持ち込まれるタイ国外源泉所得に適用されます。また、24年1月1日前に稼得された国外源泉所得は課税対象から除外されます※4

      ※2 Departmental Notification No. Por. 161(タイ語):こちら
      ※3 Departmental Notification No. Por. 161に関するQ&A:こちら、民商法典第41条に関するQ&A:こちら
      ※4 Departmental Notification No. Por. 162:こちら

      この変更は、基本的に納税者にとって不利な変更となります。たとえば、24年にタイの駐在員でタイに180日を超えて滞在していた日本人(24年にタイ居住者になる)が、日本で有している不動産からの賃貸収入(タイ国外源泉所得)を25年に入ってタイに送金した場合、これまでの解釈指針では課税対象にならなかった(所得を稼いだ年と違う年の送金であるため)一方、今後は課税対象になる(タイ居住者だった24年に稼得した所得をタイに持ち込んだことになるため)、という変更が生じると思われるためです。

      この点、歳入局が実際に所得の持ち込みをどのように検知するかについては不明確な点が残っていること、および、これは法令ではなく解釈指針であるため、税務実務がどのように変わるか不明であることを考えれば、実際に課税がなされるのかはいまだ不透明です。他方、こういった所得にも個人所得税の課税がなされるかもしれない、ということは理解しておくべきでしょう。

      タイ歳入局との争いを避けるためには、タイにそういった所得を持ち込まないようにするというのが次善の策になります。この解釈指針は「今後、タイ居住者が稼いだタイ国内源泉所得およびタイ国外源泉所得の全てが無条件でタイにおける個人所得税の対象となる」と言っているわけではありません。このため、タイ国外源泉所得があったとしても、それをタイに持ち込まないのであれば、タイでの個人所得税の対象にはならないと思われるためです。

      引き続きタイでビジネスを行う皆さんは情報収集を怠らず、今後の課税実務に注意を払ってください。本稿が皆様がタイでビジネスをする上での一助となれば幸いです。


      弊社では、タイ会計基準の日本語訳を出版し、解説のための寄稿やセミナーの実施を行っています。また、いくつかタイ会計基準の日本語解説資料も存在します。
      ・2021年4月号 タイ会計・税務・法務特集
      寄稿者プロフィール
      • 倉地 準之輔 プロフィール写真
      • 倉地 準之輔

        日本で大手監査法人、外資系企業勤務を経て、2013年来タイ。外資系会計事務所のジャパンデスクにて日系企業向けコンサルティング業務に従事した後、15年10月にBizWings (Thailand) Co., Ltd.を設立。経営コンサルティング業務を提供し、現在に至る。公益財団法人東京都中小企業振興公社タイ事務所経営相談員。ジェトロ中小企業海外展開現地支援プラットフォーム・コーディネーター。公認会計士(日本)。東京大学経済学部経営学科、米ケロッグ経営大学院卒業(MBA)。

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