【中国】外資企業、広がる脱中国=ロックダウンに失望、供給網見直し(上海支局・佐藤雄希)

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新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に封じ込める中国の「ゼロコロナ政策」が、外資系企業を苦しめている。主要都市が相次いでロックダウン(都市封鎖)に陥る中、長期の操業停止に追い込まれる企業が続出。物流やサプライチェーン(供給網)の混乱は長引き、「脱中国」を模索する動きも広がっている。
想定外の封鎖
「全く想定していなかった。不意打ちだ」(日本企業駐在員)。3月下旬、上海で都市封鎖が始まると、外資系企業の間で衝撃が広がった。市当局は「国内経済だけでなく、世界の供給網に深刻な打撃を及ぼす」として直前までロックダウンを否定。進出企業も額面通りに受け取っていたため、準備不足のまま長期の営業停止を強いられることになった。
上海は国際的な金融、物流、貿易の重要拠点。進出企業の多くが周辺国・地域事業を統括する地域本部を構え、年明け以降、主要都市が相次いでロックダウンに陥る中でも「上海は封鎖を回避し、別の道を歩むはず」とみられていただけに、外資系企業の失望は大きい。
影響は深刻だ。日本企業100社が参加した上海の日本商工クラブのアンケート調査では、封鎖開始から1ヵ月を経た4月末でも63%が「操業を停止している」と回答。「稼働率3割未満」の企業も28%に上り、9割が本格操業とほど遠い状況に置かれていることが分かった。当局は半導体や自動車など、重要産業の生産再開を支援しているが、物流寸断や厳格な行動制限は続き、部材や従業員の不足が稼働率向上を妨げている。
広がる脱中国
食料不足や医療不安など、困難を極める生活に嫌気した外国人が上海を脱出する動きも加速。香港の調査会社が4月中旬、外国人950人を対象に行った調査では、48%が「今後1年以内に上海を離れたい」と回答。37%は「封鎖解除後の状況を見極めた上で転出を検討する」と答えた。
進出企業の間でも「脱中国」の動きが出てきた。欧州連合(EU)商工会議所が4月下旬に実施し、372社が回答したアンケート調査では、23%が中国からの撤退や投資先の見直しを検討していると回答。8割弱が中国の投資先としての魅力が落ちたと答えた。米商工会議所が5月初旬にかけて実施し、121社が回答した調査では、対中投資を「減らす」との回答は26%、「延期する」も26%に上り、「増やす」はわずか1%にとどまった。
中国には改革開放後、40年以上かけてサプライチェーンが集積。専門家の間では「魅力は簡単には失われない」と強気な見方も多い。商務省によると今年1~4月の中国への直接投資は前年同期比20・5%増加した。ただ、伸び率は月を追うごとに鈍っており、米中対立の激化やウクライナ戦争も加わり、西側企業のサプライチェーン組み替えは急激に進みつつある。ある日系企業の幹部は「サプライチェーンは複雑に入り組んでいる。撤退は土台を支える下請けから始まり、ある時点で一気に加速するかもしれない」と警告する。
※この記事は時事通信社の提供によるものです(2022年5月20日掲載)
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