【ワシントン】米中、APECで経済連携巡り攻防=2023年の「前哨戦」

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タイの首都バンコクで19日閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、域内の経済連携をめぐり米国と中国が応酬を繰り広げた。2023年は12年ぶりに米国が議長国を務め、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱で低下した求心力の回復を狙う。米中の主導権争いが激しさを増しそうだ。(ワシントン支局 田中有美)
「IPEF」VS「一帯一路」
「この地域にとって米国以上に重要なパートナーはいない」。バイデン大統領の代わりにAPEC関連会合に出席したハリス副大統領は中国への対抗心をあらわにした。日本など14ヵ国が正式交渉を始めた米国主導の経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」にも言及し、具体的な成果を急ぐ考えを表明した。
IPEFは中国経済への過度な依存から脱却を図る枠組み。従来型の自由貿易協定(FTA)と異なり関税の引き下げに踏み込まず、公正な貿易・投資ルールづくりに焦点を当てる。タイ米通商代表部(USTR)代表もAPECに合わせて記者会見し、米国開催となる23年はIPEF交渉に「強気」で臨むと自信を見せた。
ホワイトハウスによると、ハリス氏は23年のAPECの主要議題に気候変動対策を掲げると加盟国に伝えた。温暖化の一因であるメタンガス排出量や、電力分野における炭素排出量の削減目標設定を目指す。「脱炭素」はIPEFの交渉分野の一つでもあり、世界最大の排出大国である中国に圧力をかける思惑も見え隠れする。
これに対して中国の習近平国家主席はAPEC関連会合にメッセージを寄せ、“中国抜き”のIPEFを念頭に「アジア太平洋地域を大国間競争の場にすべきでない」と反発。別の会合では、23年に中国経済圏構想「一帯一路」の国際会議を開くと表明したほか、“米国抜き”のTPPへの加入に改めて意欲を示した。
待ち受ける難路
米中貿易戦争の本格化から丸4年。バイデン氏と習氏は14日の首脳会談で、対立が深まるきっかけとなった貿易問題では妥協点を見いだせなかった。バイデン氏は「中国による不公正な経済慣行への懸念」を示したのに対し、習氏は「経済・貿易、科学技術の政治化、武器化に反対だ」と返し、双方の主張は平行線をたどった。
米中の関係改善に向けた道のりは険しい。米与党・民主党が先の中間選挙で下院多数派の地位を失ったことで、党派対立を背景に内政が停滞局面に入る一方、バイデン政権は「大統領の権限が比較的大きい外交・安全保障政策に成果を求めていく」(米有力シンクタンク)とみられる。米大統領選を翌年に控える23年にAPECや対中政策で対応を誤れば、政権のさらなる失速につながりかねず、弱腰は見せられない。
APECの米国開催は、米国がTPPを離脱する前の11年以来。オバマ政権が中国を排除してTPP交渉を主導したのに対し、中国は自国が影響力を発揮しやすい地域的な包括的経済連携(RCEP)への支持を打ち出した。さらに中国は対米けん制を狙い、14年にAPEC議長国として一帯一路を提唱した経緯がある。
23年のAPECも米中経済覇権争いの主舞台になりそうだ。APECは米国、先進7ヵ国(G7)は日本、20ヵ国・地域(G20)はインドと、IPEFメンバーの民主主義国が主要国際会議を仕切ることになる。台湾有事をはじめとする地政学リスクも重なり、アジア太平洋圏の経済外交が一段と複雑さを増すのは必至だ。
※この記事は時事通信社の提供によるものです(2022年11月22日掲載)
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