【ベトナム】6.5%目標「非常にチャレンジング」=年後半に7%台半ば以上の成長必要

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ベトナムのグエン・チ・ズン計画投資相は4月3日に開かれた政府の会議で、1~3月期の経済情勢を踏まえた2023年の展望を示した。政府が今年の目標とする6.5%の成長実現に向けては、年後半に7%台後半のペースで拡大する必要があると試算し、「非常にチャレンジングなシナリオだ」と述べた。経済を刺激し、生産を含めた企業活動を下支えするため、減税などの新たな対策を早急に打ち出す必要があると訴えた。 (ハノイ支局 北川 勝弘)
10~12月期には7.9%成長
6.5%成長を実現するためには、4~6月期に6.7%、7~9月期に7.5%、10~12月期に7.9%に成長ペースを加速させることになるとした。経済成長に関する決議1号と比べ、4~6月期は想定通りだが、7~9月期は1.0ポイント、10~12月期は0.8ポイント上回るペースで経済を拡大させなければならないとした。
ズン計画投資相は、決議1号に盛り込まれたシナリオ通りの展開で推移すると、今年の成長率が6%になると試算した。1~3月期の成長率が3.32%となり、11年以降で20年(3.21%)に次ぐ、2番目の低い成長率にとどまった。決議で想定していた5.6%を大きく下回っており、目標の6.5%成長に0.5ポイント届かないと見込んだ。
ダウトゥ紙(電子版)によると、ズン計画投資相は、「23年の成長率が6%にとどまれば、21~25年に掲げた6.5~7.0%の成長目標の実現への圧力が高まることになる」と指摘。「5年間で6.5%成長を達成するためには、24~25年に平均8%近いペースで拡大し続けることが必要になる」とした。今年の政府目標の6.5%を達成するシナリオについては、「非常にチャレンジングで、あらゆる政治レベルでの努力が求められることになる」と言明した。
コア指数を警戒
経済の現状を巡っては、「マクロ経済は引き続き安定しており、インフレ率は抑制され、主要なバランスが均衡している」と分析した。消費者物価指数(CPI)に関しては、徐々に低下する傾向が見られるとした。他方で、変動の大きなエネルギー、食品などを除いたコア指数の動きに関心を払い続ける必要があると注意喚起した。
財政政策については、企業や個人のコスト圧力を軽減し、生産、投資などを促すことに注力するべきだとした。金融政策は、財政を含めたその他のマクロ経済政策を調和を図りつつ、柔軟かつ効果的に運営することが重要だと指摘した。
企業、個人が融資を利用しやすくするため、預金と貸出金の金利を引き下げるよう促し、為替相場の安定を図ることも注文した。米欧における銀行の経営破綻の原因を分析・評価し、国内の金融システムへの影響を検証することを求めた。
コロナ禍より対応難しく
21年7~9月期にはマイナス成長も経験したベトナムだが、その際に経済を落ち込ませた最大の要因は新型コロナウイルスの完全な封じ込めを目指して政府が実施したロックダウン(都市封鎖)をはじめととした厳格な行動制限だった。ファム・ミン・チン首相は、厳格な行動制限を永遠に続けることはできないなどとして、22年秋にコロナ制限の緩和に軸足を移し、その後の経済立て直しを実現した。
ところが現在のベトナム経済に急ブレーキをかけているのは、世界的な需要の低迷で、ベトナム企業は主要な輸出先からの受注減に見舞われた。これまでの成長をけん引してきた外需が落ち込み、国内の生産活動や雇用に影響が及んでいる。ベトナム政府としては、内需を下支えつつ、世界経済が持ち直すのを待つことしかできず、ある意味で、コロナ禍のマイナス成長よりも対応が厳しくなっている。ベトナム政府は引き続き、6.5%の成長目標実現に取り組むとしているが、課題は山積したままで、難しい経済運営を迫られている。
※この記事は時事通信社の提供によるものです(2023年4月6日掲載)
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