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時事通信 特派員リポート

【ラオス】半世紀前の不発弾今も=最大空爆被害国ラオス

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      後発開発途上国に認定されるラオスは、世界で最も激しい空爆にさらされた国でもある。米軍がベトナム戦争さなかの1964~73年に実行した空爆は58万回以上。9年間にわたり8分に1回、爆弾を投下された計算だ。その多くは爆発しないまま着弾。パリ和平協定調印から半世紀を経た今も、住民は不発弾におびえる生活を送っている。(バンコク支局 東敬生)

      経済開発を阻害

      なぜ小国ラオスが標的にされたのか。国内で特に空爆が多かったのは北部と南部。北部は米国が警戒していた共産主義勢力の戦闘部隊パテト・ラオの支配下にあった。一方、南部には北ベトナムから南ベトナム解放民族戦線への補給路「ホーチミン・ルート」が張り巡らされていた。ルートの正確な位置を把握できなかった米軍は、広範な地域に爆弾を落とした。

      ラオスに投下された爆弾は200万トン以上で、人口1人当たりに換算すると世界最大。この中には2億7,000万個のクラスター子弾が含まれている。このうち3割は爆発しなかったとみられ、推定8,000万個がベトナム戦争終結後も不発弾として残された。1964~2011年に不発弾で死傷した住民は5万人以上。不発弾は農業や林業の妨げになっており、経済開発を阻害している。

      不発弾の被害は今も続き、20年は23件の事故で7人が死亡、26人が負傷した。多いのは農作業中、田畑にくわを入れた瞬間に爆発したケース。食事の用意をしようと地面の上でまきに火をつけたところ、熱が伝わって地中の不発弾が破裂したこともあった。子弾を拾った子供がおもちゃと勘違いして遊び、さく裂した悲惨な事故もある。

      被害を抑えようと全土で連日、約3,000人が不発弾の除去作業に当たる。北部シエンクワン県の農村部では「撤去作業中」と書かれた看板の背後で、封鎖された土地をあちこちで見掛けた。英NGO「地雷顧問団(MAG)」の推計では、ラオスでは今も大ロンドン市の面積に相当する1,600平方キロの土地に不発弾が眠る可能性がある。MAGが昨年、除去したのは15平方キロ。危険な土地で気の遠くなるような作業が続く。

      被害逆手に土産物製造

      かつて空爆を受けた地域では、厄介者の不発弾を逆手に取った商売も行われている。シエンクワン県ナピア村の未舗装道路の両脇には「スプーン製造」と表示された小屋が並ぶ。その一つをのぞくと、不発弾の残骸を使い、土産物を製造していた。

      利用するのは不発弾から抽出したアルミニウムのみ。最初に手掛けた製品から「スプーン村」と呼ばれるが、今ではゾウや水牛、ミサイルの形をした置物やキーホルダー、栓抜きなどレパートリーが広がっている。訪ねたときは箸作りに取り組んでいた。木製の型に熱で溶かしたアルミを流し込む。型を開けると、細長い箸が姿を現した。「健康への懸念から、作業は1日置きに行う」と関係者。製品は観光地に出荷し、古都ルアンプラバンのナイトマーケットなどで売られている。

      爆撃による悲劇は不発弾だけではない。シエンクワン県のピウ洞窟は1968年11月24日、米軍機のロケット弾攻撃を受け、内部に避難していた住民374人が犠牲になった。ラオスでは「記憶の日」として伝えられる。シエンクワン地方のかつての中心地だったムアンクーンでは、16世紀に建てられた名刹(めいさつ)ワット・ピアワットが米軍機の爆撃で破壊された。屋根がなくなり支柱だけとなった寺では、傷ついた仏像が青空の下で無残な姿をさらす。地元の運転手ウォンさんは「爆撃がなければムアンクーンはルアンプラバンのような歴史的な街になっていただろう」と唇をかんだ。

      ※この記事は時事通信社の提供によるものです(2023年3月14日掲載)

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