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タイの意匠制度

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      当職担当の回ではタイの知的財産権法それぞれについて詳細に説明している。

      今回はタイの知的財産制度における「意匠制度」について、日本と比較しつつ解説する。意匠制度に基づいて発生する「意匠権」は、特許権と同様に知的財産権の一種であり、特に物品のデザイン面を保護する権利である。

      意匠の定義

      日本において、意匠とは、「物品(物品の部分を含む。以下同)の形状、模様もしくは色彩もしくはこれらの結合(以下「形状等」)、建築物(建築物の部分を含む。以下同)の形状等または画像(機器の操作の用に供されるものまたは機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む)であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」と定義されており(日本意匠法2条1項)、「意匠法」という独立した法律によって保護されている。

      一方、タイにおいては独立した「意匠法」という法律は存在せず、特許法の一部において「意匠特許」という形で意匠が保護されている。タイにおける意匠は「製品に特別な外観を与え、工業製品または手工芸製品に対する型として役立つ線または色の形態または構成」(タイ特許法3条)と定義されている。

      具体的な制度の違い

      日本の意匠制度とタイの意匠制度には以下のような違いがある。

      (1)権利期間

      意匠権の存続期間は、日本は「出願日から25年」である(日本意匠法21条)。一方で、タイは「出願日から10年」と短い(タイ特許法62条)。

      (2)部分意匠制度・関連意匠制度

      日本には、独立した製品のうち一部分のみ(例えば、自転車のハンドル部分のみ)を意匠として保護することが認められており、これを「部分意匠制度」というが、タイにはこの制度が存在しない(ただし、独立した部品として流通可能な物品については、その部品単体で出願が可能である)。なおタイにおいては、この点の法改正が予定されている。

      また、日本ではメインとなるデザイン(本意匠)と、これに類似するバリエーションのデザイン(関連意匠)をともに保護可能とする「関連意匠制度」が存在するが、タイにはこのような制度は存在しない(ただし、所定の要件を満たせば、同一出願人であれば互いに類似する意匠の登録も認められるようである)。タイでは、この点の法改正も予定されている。

      (3)一意匠一出願

      日本もタイも原則として、一つの意匠出願につき一つの意匠しか記載することはできない(一意匠一出願)。

      ただし日本では、セット物の物品(フォークとナイフセット等)で、全体として統一がある場合に限り、そのようなセットを一意匠として出願(「組物の意匠」という)することができるという例外がある。

      一方で、タイにはこのような例外はない。

      (4)出願公開

      日本において公開される意匠公報は、原則として、意匠登録となり権利化されるもののみである。したがって、意匠出願が審査の結果拒絶され、登録にならない出願については公開されない。

      一方でタイでは、方式審査を通過した出願で、公開費用を納付したものについてはすべて公開される(登録段階に発行される「登録公報」は存在しない)。そのため、最終的に拒絶され、意匠権が発生しない出願についても公開されるものがある。

      (5)図面

      やや実務的な話になるが、日本において特許出願をする場合、基本的には六面図(正面図・背面図・平面図・底面図・右側面図・左側面図)のみを記載すれば足りる。

      しかしながら、タイにおいては、これに加えて斜視図が必須とされるため注意が必要である。また、日本において提出することも多い、断面図等の参考図は提出できない。

      寄稿者プロフィール
      • 永田 貴久 プロフィール写真
      • TNY国際法律事務所
        日本国弁護士・弁理士
        永田 貴久

        京都工芸繊維大学物質工学科卒業、2006年より弁理士として永田国際特許事務所を共同経営。その後、大阪、東京にて弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所を設立し代表社員に就任。16年にタイにてTNY Legal Co., Ltd.を共同代表として設立。TNYグループのマレーシア、イスラエル、メキシコ、エストニアの各オフィスの共同代表も務める。

      \こちらも合わせて読みたい/

      タイの特許制度(4)

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