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タイにおける債権の保全・回収(中編)

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    日本国内での取引と同様、タイ企業との取引時に考えておくべきことの一つとして、相手企業が任意に債務を履行しない場合、どのようにして債権を回収するか、ということがある。

    当職担当の前回は、取引開始前(契約締結時)に意識しておくべき事項について概観した。今回は、タイにおける債権の保全・回収(中編)として、引き続き日本企業が商品をタイ企業に売るという場面を念頭に置き、取引開始後に意識しておくべき事項について整理する。

    大切な記録化

    取引開始後に意識しておくべきことは、まず記録化を図ることである。

    仮に代金の不払いなどが生じて訴訟に及ばなければならなくなった場合、自己の主張は自ら証拠によって裏付けなければならないのが原則である。

    いくら「こういう事実があったことを自社の担当者が確実に記憶している」と言い張っても、それを裏付ける資料がなければ、裁判所にその事実の存在を認めてもらえないことも十分にあり得る。

    したがって、契約時に契約書を作成することは当然として、メールやSNSでの相手方とのやり取りは全て保存しておくべきであるし、請求書や受領書等の関連書類(の控え)も全て保管しておくことが重要となる。

    相手方との口頭でのやり取りも記録化すべきであるが、その際には、メモ等の単なる内部文書として記録化するのではなく、相手方にも内容を確認してもらった上で署名を得ておくことが望ましい。

    とはいえ、署名入りの書面を準備していては間に合わない場面や、作業の負担が内容に比して重くなりすぎる場面もある。

    そのような場面では、決定事項を中心としてやり取りした内容を簡潔にまとめたメールを相手方に送信し、メールとして記録化しておくのも一つの方法である。

    取引状況の確認

    また、継続的な取引を行う際、取引開始前に与信限度額を設定していても、いつの間にか限度額を超える取引がなされていたということが時折見受けられる。

    そのため、例えば営業部門と経理部門が取引状況を確認するなどして、取引額が限度額内に収まるよう配慮しておくことが必要である。

    なお、その限度額は、あくまでも取引開始時に設定されたものである。そのため、財務報告書等の取得や相手方のオフィス等への来訪を通じて、限度額を定期的にアップデートしておく方が望ましい。

    加えて、万が一、相手方に不払いがあった場合には、速やかに連絡を取り、支払いを催促することが重要であるが、支払いの目処が立たない場合等には、訴訟等の法的手段に及ぶことを検討せざるを得ない。

    この点、仮に訴訟等の法的手段に及ぶことをひとまず控えるのであれば、ただ口頭での催促を続けるだけではなく、消滅時効との兼ね合いでも、定期的に債務承認書に署名させることを検討すべきであろう。

    最後に、日本では2020年4月1日施行の民法改正にて、いわゆる短期消滅時効に関する規定が削除されたが、タイでは短期消滅時効等が現在も存続している(なお、企業間の売買に関する売買代金債権の時効は、5年と評価されるケースが多いと考えられる。民商法193/34条(1)但書及び193/33条(5))。

    したがって、時効により債権が消滅してしまわないよう、債権の時効期間についてきちんと把握しておくとともに、状況に応じて債務承認書を取得したり、訴訟を提起したりすることによって、時効を更新する(中断する)よう配慮しておかなければならない(民商法193/14条)。

    寄稿者プロフィール
    • 靍拓 剛 プロフィール写真
    • GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
      日本国弁護士
      靍 拓剛

      2006年京都大学法学部卒業。2008年京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、弁護士として福岡県福岡市内の法律事務所で勤務し、主として企業法務や紛争対応に従事する。20年よりGVA Law Office (Thailand)に加入し、国際紛争解決を中心に企業を支援する。

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