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タイの清算と手続き

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      コロナ禍に伴う経済悪化の影響を受けて、タイでも事業を撤退する会社が一定数出てきている。
      これらの事態を含め、今回はタイの非公開会社が清算する場合の必要な手続きとその流れについて解説する。

      清算とは

      まず、会社の法人格を消滅させる出発点となる行為を「解散」と言い、解散した会社の債権債務を整理し、残った財産を分配する手続きが「清算」に当たる。そして、清算登記によって法人格は消失する。

      この手続きは会社が自ら進めるものであり、タイで清算を行う場合、会社は債務超過のままで手続きを完了することはできない。これに対して、法人の破産は債務超過の状態から会社に財産があれば売却し、債権者にできる限りの配当を行った上、裁判所の命令をもって清算し、法人格の消滅により債務も消滅させる手続きである。

      タイでは清算手続きに向けた債権債務の整理や、後述する歳入局による税務調査に時間がかかるため、清算決定から実際の登記が完了するまでにかなりの期間を要する(一般的には1年半から2年以上かかることが多い印象)。 タイの清算手続きにおいて

      必要な対応事項

      ⑴ 会計上の動きをほぼ停止する

      前述のとおり清算手続きでは、「解散」と「清算」それぞれの登記手続きが求められる。しかし、最初の解散登記を行ってから150日以内に最終事業年度※1の法人所得税を申告しなければいけないため、手続きを進める時点で会計処理や決算書の作成をある程度まとめておく必要がある。

      そのため会社を清算すると決めた場合、まずは事業停止時期を定め、取引先などへの連絡や調整と並行して事業停止時期に合わせた従業員の解雇手続きや、保有する許認可などについてのキャンセル手続きを進めることとなる。

      例えばBOI奨励を取得している会社の場合、事業停止後に奨励の取り消し申請手続きが必要である。従業員の解雇手続きに際しては解雇補償金の支払いが必要であり、勤務年数によって金額が異なるため事前にだいたいの総額を把握しておきたい※2。

      また工場やオフィスといった賃貸借契約を途中で解約する場合、デポジットが返還されない場合や残る賃貸期間の賃料の支払いを請求される場合もあるため、事前に内容を確認し、賃貸人と交渉しておきたい。

      ⑵ 株主総会の開催〜解散の公告

      次に、解散についての決議を行うための株主総会を開く。会社の解散は特別決議事項となるため、会社の定款でより厳しい条件を別途で定めていない限り、資本金の4分の1以上を有する株主が出席した上で、出席株主の有する議決権の4分の3以上の賛成が承認要件となる。

      同時に清算人の選任を実施し、総会後は14日以内に解散及び清算人の登記を行う必要がある(民商法典1254条)。さらに会社の解散について新聞で公告を行うと共に、会社で把握している債権者に対して個別に通知を行わなければいけない(同1253条)。

      ⑶ VAT登録抹消の申請手続き

      解散登記後はVAT登録抹消申請手続きを契機とし、歳入局による税務調査が進められるが、調査時期が歳入局次第になるため、開始から完了までに時間がかかる場合がある。また調査における担当官からの連絡に際しては、会計書類といった必要情報の所在などを把握しておく必要があるため、事前に対応できる担当者を検討しておく必要がある。

      ⑷ 株主総会決議を行う

      税務調査後、清算完了を承認する株主総会決議(普通決議)を行い、清算の登記が済めばひと通りの手続きは完了である。

      まとめ

      以上の通り、清算手続きには一定の期間を要する。このため清算を進めるか否かを検討する際には、清算以外の方法(M&Aなど)の可能性がないかなども考慮した上で決定すべきである。

      ※1 解散登記日が、会社としての最終事業年度の末日となる。
      ※2 解雇通知は1給与日以上前に行わなければならない(労働者保護法17条2項)。

      寄稿者プロフィール
      •  藤原 杯花プロフィール写真
      • TNY国際法律事務所
        日本国弁護士
        藤原 杯花

        17年1月よりタイのTNY国際法律事務所にて執務。TNY国際法律事務所は、日本人弁護士2名が共同代表を務める法律事務所であり、会社設立から規制調査、契約書のリーガルチェック、商標登録申請、相続手続きなどのサービスを提供している。

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