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時事通信 特派員リポート

【フィリピン】「政界引退」に疑問符=ドゥテルテ大統領(マニラ支局 榊原 康益)

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      フィリピンのドゥテルテ大統領が「政界を引退する」と表明した。来年の国政選挙に出馬することを取りやめ、政治の舞台から退くという。だが、過去の言動と取り巻く現状を考えると、引退の実行性には疑問符がつく。

      肩すかし

      ドゥテルテ大統領は2016年6月に就任した。あけすけな発言や「麻薬戦争」が国民に好感され、支持率は84~66%の高さを維持。直近の今年6月も75%に上った。歴代の大統領と異なり、任期終盤でも人気は衰えていないが、大統領の任期は1期6年に限られるため再選できない。

      「後継者は誰か」が注目されていた8月、ドゥテルテ氏は来年5月の副大統領選へ出馬すると表明した。大統領経験者が副大統領になることを明確に禁じた規定はないが、過去に例がない。

      法律の専門家や国会議員は「憲法で禁じられた再選への裏口になる」と批判した。大統領の辞任・死亡時は副大統領が昇格するルールがあり、ドゥテルテ氏が副大統領を経て2度目の大統領に就任できるためだ。

      国民もノーを突きつけた。6月に行われた世論調査で「ドゥテルテ氏の副大統領選出馬は憲法違反」だとする回答が60%に達し、「出馬すべきだ」の39%を大幅に上回った。正副大統領選に関する9月の世論調査でも、ドゥテルテ氏の「副大統領候補」としての支持率が14%となり、7月時点の18%から低下。順位が2位に後退した。

      ドゥテルテ氏は10月2日、マニラ首都圏の立候補受付会場を訪れながら届け出を行わなかった。「肩すかしを食らわされた」と思ったのもつかの間、続いて「引退」が飛び出し、報道陣は振り回された。

      にぎわう劇場

      ドゥテルテ氏は引退の理由を「(憲法違反と考える)国民の求めに従った」と説明した。だが、フィリピン大のフランコ教授(政治学)は「過去を振り返ると疑わしい」とみる。

      「過去」とは前回16年の大統領選を指す。ドゥテルテ氏は「出ない」と公言し、届け出期間中に立候補しなかったが、後に出馬を撤回した友人の「代理」として立ち、当選した。

      候補の差し替えは制度上認められており、今回も11月15日まで可能だ。ドゥテルテ氏に代わって「右腕」のゴー上院議員が副大統領選へ立候補しており、今後ゴー氏が取りやめてドゥテルテ氏に出馬枠を譲る余地を残した。

      ドゥテルテ氏が現在抱える訴追リスクも、引退が疑われる理由の一つだ。麻薬戦争において同氏が「抵抗する容疑者は容赦なく射殺しろ」と指示したことで、少なくとも7000人が裁判を経ずに死亡した。オランダ・ハーグの国際刑事裁判所が本格捜査しており、「非人道的な殺害」で訴追される恐れがある。

      序列を落としてまで権力の座にとどまろうとしたのは、訴追の回避が狙いだったとみられているが、引退は訴追リスクを高めかねない。

      「引退しても権力維持」を可能にする策もある。長女サラ氏の大統領就任だ。サラ氏の人気は高く、世論調査で「大統領候補」の首位をキープしている。既にダバオ市長への再選出馬を届け出たが、父親と同様に大統領選へ差し替え出馬するとの観測がくすぶっている。

      父か娘か、あるいはーー。そんな推測合戦が「資金を使わずにメディアと大衆の関心を引きつけている」とフランコ教授は指摘する。ドゥテルテ劇場はにぎわいを増している。

      ※この記事は時事通信社の提供によるものです(2021年10月14掲載)

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