【香港】企業で人手不足が深刻化=香港政府、人材誘致に本腰

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香港の企業で人手不足が深刻化している。日本貿易振興機構(ジェトロ)などの調査結果によると、香港に拠点を置く日系企業の3割強が今年上半期に「人材流出があった」と回答。中国による香港統治を強める国家安全維持法(国安法)の施行などを背景に、香港の労働人口は近年減少傾向にあり、政府は域外からの人材誘致に本腰を入れている。(香港支局 大水 祐介)
国安法施行が暗い影
調査は、ジェトロ香港事務所と在香港日本総領事館、香港日本人商工会議所が7月3~7日に実施し、241社から有効回答を得た。上半期に「人材流出があった」と回答した企業は33.6%で、後任の人材を「確保できておらず、募集中」または「確保できていないが、現時点で募集していない」と答えた企業は48.8%に上った。
香港のビジネス環境に関しては、人材確保で「悪化した」が40.2%、「大きく悪化した」が8.3%で、一部企業では業務遂行や売り上げに影響が出ている。不足する人材は職種別で「バックオフィス職・アシスタント職」(75.0%)、「営業職」(66.6%)、「技術職・エンジニア」(59.1%)が多かった。
人材の流出先は約7割が域外だ。2020年6月に施行された国安法については、45.2%が懸念していると回答。理由(複数回答)は「人材が流出し、優秀な人材の確保が困難となる恐れがある」が69.7%と、最も多かった。
主要経済団体の香港総商会が4月に実施した調査結果でも、香港企業の74%が「人材不足に直面している」と回答。こうした状況が過去1~3年間続いていると答えた企業は61%、3年以上は22%だった。退職理由(複数回答)は「より高い給料」(79%)、「移住」(70%)、「ワーク・ライフ・バランスの改善」(51%)が上位を占めた。
21%は既に業務の一部または全部を香港から移転したと回答。香港総商会幹部は「流出した労働力は短期的に香港に戻らない可能性がある」と懸念を示す。
獲得競争「勝たねば」
特に航空業界では、2万人以上の従業員が不足。香港空港第3滑走路の完成に伴い人手不足はさらに深刻化する可能性があり、空港サービス部門では人材が3~4割不足しているという。
政府統計局のデータによると、22年の香港の労働人口は377万6,300人と、国安法施行前の19年(398万7,800人)と比べて約21万人減少。「労働力不足は地域経済の発展にとって隠れた懸念要因」(政府高官)となっている。
こうした現状を踏まえ、香港政府は今年、域外からの人材誘致を強化。各種受け入れ制度には6月末時点で10万件以上の申請があり、約6万1,000件が承認された。年間受け入れ目標は3万5,000人で、申請件数は約3倍に上っている。
中でも高度人材の誘致を目指す「トップ・タレント・パス・スキーム」は反響が大きく、申請は3万6,000件を超え、約2万6,000件が承認された。年収250万香港ドル(約4,500万円)以上、または世界トップ100の大学を卒業し、過去5年間に3年以上の実務経験がある人を対象に2年間のビザを発給する。
スイスのビジネススクール、国際経営開発研究所(IMD)が発表した23年版の「世界競争力ランキング」によると、香港は7位(前年は5位)に下がった。香港政府トップの李家超行政長官は順位低下の要因について、労働力の減少と一部の有能な従業員の喪失だと指摘する。
李氏は「有能な人材がいないと生産性が上がらず、サービス水準も下がるため、社会全体に悪影響を与える」と強調。世界各国・地域との人材獲得競争に「勝たなければならない」と呼び掛け、積極的な人材誘致を推進する意向を示している。
※この記事は時事通信社の提供によるものです(2023年8月2日掲載)
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