【中国】中国、EVで輸出攻勢=最大手は日本攻略、市場競争激化へ

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中国が電気自動車(EV)の輸出攻勢を本格化させている。最大手の比亜迪(BYD)は9月下旬に日本で小型EV「DOLPHIN(ドルフィン)」2タイプの販売を開始し、日本市場の攻略に本腰を入れた。一方、東南アジアや欧州でも、ガソリン車を強みとする日系自動車メーカーとの競争が激しさを増している。 (中国総局 榊原 俊介)
技術の蓄積進む
BYDは1月にスポーツ用多目的車(SUV)のEVを日本で発売、市場参入を果たした。月間販売台数は平均100台程度にとどまっているが、同社は第2弾となる小型EVを日本向けの重要なモデルと位置付け、攻略に自信を見せる。年内にはさらに別の車種の発売も予定されており、その後も新車種を市場に投入する方針。日系メーカーの関係者は「知名度が上がれば、販売も伸びる」と警戒感を示した。
中国ではEVやプラグインハイブリッド車(PHV)など「新エネルギー車(NEV)」関連の産業育成を急ぐ政府の後押しもあり、多くのメーカーがEV市場に参入、技術の蓄積が進んだ。国内での競争が激化する中、BYDなどは海外展開も加速している。
「自動車の街」と呼ばれる中国南西部の重慶市にある物流拠点「鉄路口岸」を9月上旬に訪れると、各社の輸出用EVが並んでいた。担当者によると、輸出が始まったのは今年から。中国政府が巨大経済圏構想「一帯一路」を進める中、「欧州が主な仕向け地だが、一部はアフリカや中南米に向かう」という。
日系メーカー、EV開発に出遅れ
「日本の自動車業界にとって厳しい年だ」。北京に駐在する日系自動車メーカーの幹部はこう話した。中国自動車工業協会によれば、今年1~7月の自動車の輸出台数は前年同期比68%増の253万台で、このうち4分の1がNEVだった。2022年に世界首位だった日本は16%増の242万台にとどまっており、通年でも中国の首位が確実視されている。
中国メディアによると、NEVの主な輸出先は欧州で、このうち首位のベルギー向けは1~8月に前年同期比38%増加した。日本車が圧倒的なシェアを誇ってきたタイやインドネシアでも中国メーカーが急速にシェアを伸ばしている。EVの普及は世界的に進むものの、日本勢は開発に出遅れたとされ、先行きへの危機感は強い。
強まる貿易摩擦
ただ、中国の自動車輸出が伸び続けるかは不透明だ。中国の影響力拡大への懸念を背景に、各国との貿易摩擦が強まっているためだ。EUは中国製EVの補助金調査に乗り出す方針を表明。追加課税などが決まれば販売への打撃は必至で、中国は「強烈な不満を表明する」(商務省)と反発した。
BYDは今年3月にタイで東南アジア初となる組立工場建設に着手した。日系メーカーはかつて、進出先で雇用の拡大などを進め、現地経済への貢献をアピールし、批判の沈静化を目指してきた。専門家は中国当局が日本の手法を研究していると指摘し、「中国も同様のやり方を取るはずだ」と予想。ただ、領土問題で中国と激しく対立するインドでは、BYDの投資計画が拒否されたと報じられている。
業界関係者は、中国メーカーの成長には「政治への対処が重要な課題になる」との見方を示した。
※この記事は時事通信社の提供によるものです(2023年10月10日掲載)
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